285)宇和島水産高校とフィッシュガール これからの宇和島におけるその存在意義

宇和島水産高校とフィシュガール。
その取り組みと活動が宇和島に及ぼした影響とは何でしょうか?
今後の宇和島の活性化にどのような意味を持つでしょうか?

今回は幾つかの新聞記事を取り上げながら、宇和島水産高校とフィッシュガール。
そしてこれからの宇和島における存在意義を考えてみます。

宇和島が持つ他の地域にはない価値と強みが見えてくると思います。
地域との関係性のことです。

結論を先に記述しておきます。
宇和島水産高の取り組みと活動には次のような意義がある。
今後の地域の活性化の進め方、展開の仕方について大きなヒントを与えてくれている。
ひとことで言うなら、地域全体との関わりの中で、自らと地域を成長させたということ。
1 フィッシュガール自身が経験・体験を通して大きく成長した。
2 自分たちの次に続く地域の小学生にも大きな影響を与えた。
3 商品開発等を通じて、企業や自治体とも連携した。
4 水産業者とも深く関わっている。水産業にパワーを与えた。
5 卒業後も県産魚と関わり続ける。
6 多くの人々から応援されている。(深い理解者も少なくない)
7 地域活動を通じて、更に広く地域とつながっている。
8 宇和島水産高校と鈴木先生他指導にあたられた先生の尽力が大きい。
9 先進的教育手法(アクティブ・ラーニング)を先取り実践している。
10 その他(ヒト、モノ、コト、思いのつながり。連携、参加の意味を実証している。)

以上のことについて、次の記事を中心に見ていきます。
1 フィッシュガール新聞(えひめこども新聞グランプリ)(12月15日 愛媛新聞)
2 フィッシュガール、研究発表会「全国V」目指すも涙(12月13日 毎日新聞愛媛版)
3 伊予弁(鈴木先生の連載記事)(昨年12月から今年4月、全6回 愛媛新聞)
4 地域を変える高校生「食育活動を10年継続」(日本教育新聞)

1 フィッシュガール新聞(えひめこども新聞グランプリ 明倫小4年生 吉村藍香さん)
フィッシュガールの活躍の姿が、地元宇和島の小学生に非常に大きな影響を与えていることがわかります。

写真があまり鮮明でないので記事の全文を書き起こしてみます。

「魚女子」の輝き解体
宇和島水産高校「フィッシュガール」のマグロ解体を初めて見たとき、大きなマグロを女子高生が元気に素早く解体している姿に感動しました。恥ずかしがり屋の私でもフィッシュガールのようにきらきらと輝くことができるのか、またフィッシュガールのことをたくさんの人に知ってほしいと思い、新聞のテーマに選びました。
フィッシュガールは愛媛県の養殖魚「愛育フィッシュ」を全国にPRする活動をしています。輝く理由を知りたくて5人にアンケートをお願いしました。初めは自信がなかったけれど何回も何回も努力してマグロ解体ができるようになったこといろいろな経験で自分自身を磨いてきたことが分かりました。
私もお父さんに教わりながら、アジの三枚おろしに挑戦してみました。小さな魚でしたが、内臓を取り除いたりするのはとても大変だと実感しました。
マグロ解体ショーのすごさををどうしたら分かりやすく伝えられるか悩みました。紙面の真ん中に解体する過程の写真を貼り流れをつくりました。小見出しは愛媛ミカンをイメージしてオレンジ色で統一しました。
引っ込み思案の私ですが、2学期になって再びフィッシュガールのショーを見たとき、思い切ってアンケートのお礼を言いました。授業中も積極的に手を挙げることを心掛けるようになりました。フィッシュガールを見習い、私もいろいろな経験をして何事も努力し自分を磨いて輝けるようになりたいです。

フィッシュガールの活動は、単なる「愛育フィッシュ」の全国PRにとどまらず、大げさに言えば、地元宇和島の小学生に夢と希望を与えていることがわかります。

2 フィッシュガール、研究発表会「全国V」目指すも涙(12月13日 毎日新聞愛媛版)
(写真は鈴木先生のFacebookからお借りしました)

こちらの記事も全文書き起こしてみます。記者は山崎太郎さん。

 県産魚をPRする県立宇和島水産高水産食品研究部の「フィッシュガール」。国内外のイベントに引っ張りだこなほか、テレビで度々全国放送されるなど、その活躍ぶりは“超高校級”だ。同校でこのほどあった四国4県の水産・海洋系高校の生徒による研究発表会に全国優勝を目指して臨んだが、3年間の集大成とした発表は優秀賞にとどまり、涙をのんだ。

フィッシュガールは2012年に発足。顧問の鈴木康夫教諭(45)の発案で東京・日本橋三越での県のフェアで3年の女子2人が養殖マグロの解体ショーをしたのが始まりだ。

刃渡り約30センチの牛刀、片手のこぎり、出刃包丁。女子高生がそれらを振り回し、失敗しながらもクロマグロを懸命に解体する姿は、すぐに話題を集めた。

やがてテレビや新聞にも取り上げられるようになり、比例してイベント参加依頼も増えた。1年目2回、2年目9回だった解体ショーは、3年目32回、4年目47回で、5年目の今年も40回を数える。

現在、フィッシュガールは9人。中でも松本唯さん(18)、山本瑞希さん(18)、濱田春菜さん(18)の3年生トリオは1年の時から活動しており、大勢の客の前でもカメラの前でもものおじせず、解体・解説も手慣れたものだ。

今年だけでもNHKなど7本の番組に出演し、全国放送された。ある特番では、解体後、TOKIOの作ったラーメンを食べる姿まで披露された。

11月18日の研究発表会では、解体ショーや、企業・行政との連携による「鯛媛(たいひめ)カレー」などの商品開発で、自分たちの活動がどれだけ県産魚をPRできているかを検証した。テレビの視聴率やアンケートなど客観的な数字を積み上げたうえで「PRできているのではないか」と結論づけた。

山本さんは「3年間の頑張り、独自性のある活動を素材にしており自信はあった。終わった後は3人とも『やり切った』感があった」。だが最優秀賞で全国大会に進んだのは香川の多度津高。濱田さんは「何が悪かったのかな、と今でも思う」

「辞めたい」乗り越え成長 高校生活は活動一色
フィッシュガールの活動は土日が中心で、平日もその準備などに充てられるため、「甲子園を目指す高校並みにプライベートな時間はないし、学校の顔として活動する以上、日ごろから生徒の模範であることが求められる」(鈴木教諭)。あまりの忙しさに濱田さんは一時期「辞めたい」と本気で考えた。行事と重なったため、松本さんは好きな歌手のコンサートを泣く泣くあきらめたこともある。

しかし、3年間続けたことで「大阪、東京、北海道、シンガポール、いろんな場所に行かせてもらえた。初めて飛行機にも乗った」(山本さん)。「出身中学で解体ショーができた。先生たちに成長した姿を見せられてよかった」(松本さん)。

そんな3人を見て、鈴木教諭は言う。「自信があっても思うような結果にならないことは、人生には多々ある。優勝するより成長できたと思う。まあ、悔しいですけど。ワハハ」

3人はそれぞれ、活動を通してつながりができたイオングループの企業や地元の水産加工会社に就職し、卒業後も県産魚と関わりを持ち続ける。

吉村さんの「フィッシュガール新聞」が伝えるように、「辞めたい」を乗り越えるようなことや優勝できなかった悔しさも含めて、いろいろな経験を経て自ら大きく成長していることがうかがえます。さらに、企業・行政との連携による商品開発にも関わった。
そして卒業も県産魚との関わりを持ち続けるとも…。

顧問の鈴木先生は、ご自身のFacebookの記事で次のようおっしゃっています。

しんどさ、悔しさを乗り越えてよい社会人となってくれることを期待します。

また、同じ記事のコメント欄で、陣内秀樹さんは次のように書き込まれています。

この記者の方、長崎支局にもいらっしゃった山崎さんだと思います。生徒の前向きな思いや葛藤。応援者してくれる人や、乗り越えるべき壁の存在など、大切に切り取ってくださってますね。

生徒たちも、いまの水産に必要なことだからやり遂げなければという公共心ともいえるものが根っこにあるからこそ、大会では負けられないとの思いが強かったろうと思います。

水産にあまり興味がなくて入学してきても、卒業時には自分の体験をもとに地域の水産を愛し、そのために力を奮ってくれる、こういう思いの生徒が巣立っていることに感動します。

次のリンクからご覧ください。


また、福島さんと鈴木先生はFacebookで次のようなコメントの交換をされています。

(福島さん)彼女達のおかげで水産業がどれだけパワーをいただいたことか、ありがとうございます(^^)

(鈴木先生)きっかけは福島さんですね

どのような「きっかけ」があったのでしょうか?気になります。

3 伊予弁(鈴木先生の連載記事)(昨年12月から今年4月、全6回 愛媛新聞)
 鈴木先生の記事からは、一貫して、地域との関わり(地域活動)、関係性、実践、相互作用等々、そうした考え方、主義(イズム)が伝わってきます。

第1回 12月5日 私に力をくれた缶詰「ぶりだいこん」
ぶりだいこんの商品開発を契機に、地域と生徒さんの相乗効果があったこと。
そして、地域との関わりの中で生徒を育成することが使命だとおっしゃっています。
使命を果たすことは生きがいにつながりますね。

第2回 1月9日 桃源郷での出会いと地域活動
「地域活動」。地域とともに歩む水産教育の実践について語っておいでです。

第3回 2月6日 生徒の頑張りが連鎖する
生徒と生徒。生徒と教員。相互啓発、相乗効果のことを語っておいでです。

第4回 3月5日 園児が高校生を育成する
教える立場に立つことで教えられる(成長する)。相互作用のことを語っておいでです。

第5回 4月2日 産学官連携とフィッシュガール
お客様との関係性。産学官との関係性。
地方創生モデルの可能性。

第6回 4月30日 「アクティブ・ラーニング」の実践校
状況や他者との双方向コミュニケーションによる実践的学習。
学ぶことを通じての周囲への感謝や気付き。

4 地域を変える高校生「食育活動を10年継続」(日本教育新聞)

最後にもう一度「フィッシュガール新聞」の部分を拡大で掲載します。
(拡大したのですが、見にくいですね。すみません。)
吉村さんの新聞。恥ずかしながら少しこみ上げてくるものがありました…。

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