225)宇和島水産高の「鯛媛カレー」 愛媛新聞の2つの記事に「愛」を感じた

今回は、愛媛新聞の最近の記事から2つ取り上げてみます。
なんとなくですが、その取り上げ方に愛媛新聞の地元への「愛」を感じます。

一つ目です。水産高の「鯛媛カレー」についての記事。
その内容は単に「高校生が鯛を使った商品開発をしましたあ~!」という表面的なものではありません。その背景にあるものは、かなり奥が深いです。

鯛媛カレーどうぞ60

以下、記事をあらためて書き起こします。

「鯛媛カレー」どうぞ
宇和島水産高3人 4ヵ月かけ開発

宇和島水産高校の水産食品科の3年生3人がマダイのあらやカマを使ったレトルト食品「鯛媛カレー」を4ヶ月かけて開発した。8月27日は消費者の反応を探ろうと、松山空港で対面販売し、こだわりの愛媛印の味をPRした。

開発した3人は濱田春菜さん(18)、松本唯さん(18)、山本瑞希さん(18)。
マグロの解体で有名な「フィッシュガール」だ。捨てられやすい魚の部位を食品にする研究を、大学の卒業論文に当たる科目「課題研究」のテーマに選んだ。
宇和島市のねりもの製造「島原本舗」が協力。生徒は開発と販売だけではなく原価計算や仕入れ、製造まで担当した。週3時間の授業に加え、夏休みを有効活用して完成させたという。
あらでだしを取り、ごろりとしたカマが入った鯛媛カレーは魚のうま味が口に広がり、中辛より少し甘め、濱田さんは「うま味を残し、魚の臭みを消すのに苦心した。加熱してカマの中の骨もたべられるよう工夫した」と胸を張った。
鯛媛カレーは単価432円で200袋を準備。試食した人たちは「おいしい」「高校生が作ったの?頑張って」と声を掛けながら購入していた。
濱田さんは「売れ行きもよく、うれしい。(カレーに添付した)アンケートの結果が楽しみ」と笑顔。高校によると、集計結果を見て商品化も視野に入れる。(伊藤一紀)

注目したいのは、次のことです。
① 4カ月かけて開発(捨てられやすい部位を食品に。うま味を残し臭みを消した)
② 宇和島市の「島原本舗」が協力
③ 開発のみならず、販売、原価計算、仕入れ、製造も担当
④ アンケートの集計結果を見て商品化も視野に

これって、「アクティブ・ラーニング」そのものですし、「起業家教育」そのものです。
そしておそらく最も優れた「キャリア教育」にもなっています。さらに言うと「コミュニティ・スクール」(水産高では「地域活動」という言い方をしています)によってそれが実現されているということだと思います。

「アクティブ・ラーニング」「起業家教育」「キャリア教育」「コミュニティ・スクール」
何それ?こうした用語を初めて耳にされる方も少なくないと思います。教育や人材育成の分野に関わりのある方ならご存じだと思います。これらがどういうことなのかは機会を改めて取り上げたいと思いますが、いずれも言うは易く行うは難し的なところがあります。
水産高のすごいところがここなのです。

今、日本中でやろうとして試行錯誤していること、それが宇和島では既に行われているということだと思います。しかも海外進出までしている。
(それは現状においては、普及しているというレベルではなく「発芽」のレベルかもしれませんが、それでもその素地が現実に確かにあるということが重要だと思います。そしてフィッシュガールを指導されている鈴木先生は、このあたりをキチンと意識して取り組まれていることが愛媛新聞への投稿(伊予弁)やFBの投稿からうかがえます。この点についてもあらためてご紹介いたします。)

二つ目の記事です。
「『鯛媛カレー』名産化の予感」というタイトルの徳島県の女性(主婦)からの投稿です。

鯛媛カレー名産化の予感60

鯛媛カレー名産化の予感

「魚の王様」ともいわれるタイ。徳島県では潮流が速く激しい鳴門海峡でもまれた「鳴門ダイ」が取れる。歯応えが良いうえ身が引き締まり、脂の乗りも程よく一級品と呼ばれるのにふさわしい自慢の魚だ。

そんな鳴門の鯛たちが今、焦ってあたふたしてる。

それもそのはず、お隣の愛媛県から宇和島水産高校の3年生女子3人が、マダイのアラやカマを材料にしたカレー「鯛媛カレー」を開発し、試験販売まで実施したとの便りが鳴門のタイにまで届いたからだ。
試食した人からは「魚臭さを感じない」「カルシウムが取れる」など、かなり好評のもよう。県の水産物PRとして以前にも開発された「ブリカレー」に続き、今回も快挙を成し遂げた。プロのシェフたちの顔も青くなっているかもしれない。
今に「鯛媛カレー」は力強い即戦力となり、地元のみならず愛媛県の名産品となっていくことだろう。それにしても高校生にはただただ感心する。
今後も新たな課題と向き合い奮闘するようエールを送りたい。

なぜ県外のこの方の投書が記事として取り上げられたのか?そこはわかりません。
地方創生に向けた地域を担う人材育成のチャレンジだからかもしれません。
産官学の連携。一次産品の6次産業化へのチャレンジだからかもしれません。
グローバル化や女性活躍の一つの典型例だからかもしれません。

いずれにしても、上の2つの記事の取り上げ方を併せてみると、愛媛新聞は「鯛媛カレー」を、宇和島水産高の取り組みを、明らかに応援しているように思えます。
地元紙の地元への「愛」を感じました (^^)

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