157)宇和島水産高フィッシュガールの活躍の背景(教育とその可能性)

フィッシュガール

今回は、宇和島水産高校のフィッシュガール(以下「FG」と表記します。)の活躍についてです。大活躍の背景とその意味(教育の可能性)を考察してみます。

【今回の要点】
1 FGの取り組みは、13代ご当主のメッセージと呼応しているということ
2 FGの成功は、まぐれ当たりではなく、しっかりした戦略があるということ
3 FGの活躍は、学校、先生、地域の方々の連携と協力に支えられているということ
4 FGの生徒さんは、宇和島と自らの実践に自信と誇りとやりがいを感じているであろうこと
5 宇和島の人々は、水産高とFGから希望と勇気と元気をももらっているであろうこと
これらについて、宇和島水産高校の鈴木康夫先生が愛媛新聞に連載している「伊予弁」の記事なども参照しながら確認していきます。

以下、詳細に見ていきます。
スタジオに

1 FGの取り組みは、13代ご当主のメッセージと呼応しているということ
前回(156)で、13代ご当主のメッセージについて紹介しました。
超要約すると次とおりです。(詳しくは前回記事をご覧ください。)
1 人口減少・少子高齢化、宇和島の過疎化。厳しい現実と向き合う必要がある。
2 一方、宇和島には他にはない、素晴らしさ・価値・強みがある。
3 日常的で、当たり前のことなので、地元がよさに気付けていない。
4 最初になすべきことは、地元の魅力に気付くこと。
5 その素晴らしさ・価値・強みに、付加価値を乗せること。
6 それを世代を越えて、継承していくこと。
7 私たちの使命を自覚し次世代に継承する第一歩を踏み出すこと。

1991年に生産額1000億円を超えていた愛媛の養殖業。しかし消費の低迷や餌代の高騰、後継者不足などが重なり、その額は最盛期の50%程度にまで落ち込みました。

潮流が早く酸素が豊富な海域で育てられる愛媛産の養殖マグロは、トロと赤身のバランスがよく味もよいと評判は上々。そんな地元の新たな特産品を売り込もうと誕生したのがフィッシュガールなのです。

(マグロに恋した女子高生 ~フィッシュガールの挑戦から)

FGたちは、宇和島の厳しい現状を知り、一方で愛育フィッシュの価値を知り、FGの活動を始めました。FGの解体ショーと解説(発信)そのものが伊達マグロに新たな価値を加えるとともに、顧客を増やすことにもなったのですね。

ここで鈴木先生の記事(愛媛新聞「伊予弁」)を見てみます。

鈴木先生は次のようにおっしゃっています。ポイントが3つあります。
①産官学の連携で事業が始まったこと
②FGの取り組みが地方創生のモデルになるのではないかとの指摘
③次の一手も模索しているということ

宇和島市日振島でクロマグロ養殖をしている仲間にもちかけたことがきっかけだった。仲間は行政への協力を依頼し、産学官連携での県産魚PRが始まった。

高校生が発信するこの取り組みが地方創生のモデルになりはしないか、次の一手も模索している。

伊予弁 産学官連携とフィッシュガール

鈴木先生の記事をもう一つ見てみます。
教育の世界で急速に浸透しつつある「アクティブ・ラーニング」について、水産高とFGの取り組みに絡めて次のように指摘しています。
① それは体験学習や問題解決学習を通して自ら考える学習法であること
② 宇和島水産高校では以前から能動的な取り組みを行っていること(その代表例がFG)
③ FGは目的を持って勉強している。
④ FGは継承のための技術指導を行っている。
⑤ FGはPDCAサイクルを回している。
⑥ FGは海外でも発信、英語にもチャレンジした。

そして、記事の締めくくりはこうです。

つまり本校の「アクティブ・ラーニング」とは、生徒が学ぶことによって、周りの方々への感謝や気付きを実感させるものでもあるのだ。

伊予弁 アクティブ・ラーニング

さて、少々長くなってしまいました。

【今回の要点】のうち、2~5の部分。
2 FGの成功は、まぐれ当たりではなくしっかりした戦略があるということ
3 FGの活躍は、学校、先生、地域の方々の連携と協力に支えられているということ
4 FGの生徒さんは、宇和島と自らの実践に自信と誇りとやりがいを感じているであろうこと
5 宇和島の人々は、水産高とFGから希望と勇気と元気をももらっているであろうこと
についての背景や世代を越えた継承についての考察は、機会を改めて記述します。

伊達マグロ丼

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