323)おいしいミカンと算盤(そろばん) 愛媛新聞「伊予弁」 二宮新治さん

今回は少し考えさせられてしまいました。
愛媛新聞、2月11日の「伊予弁」です。
投稿は二宮新治さん(ミカン農家、柑橘ソムリエ愛媛理事長)
まずは記事をご覧ください。

次のように記述されています。

農家には味以外に求めなければいけないものがあるからだ。
農家という職業は理想のミカンを求めたい職人としての顔以前に、しっかりと収入を得て生計を立てなければならない経営者としての顔がある。いくらおいしいミカンをつくっても一定のお金を稼がなければ農家として成り立たず、まず収入を得ることを考えなければならない。
となれば効率よく収入を上げるために求めるのは味よりも外観や収穫量、作業効率となる場合も多く、味が二の次となっているのが一つの現状だ。
ミカン農家は全国に数万といるが、本当の意味でおいしく作る気がある農家はごくわずかだと感じている。

私はミカン農家のことも、ミカンの流通のこともよく知らない全くの素人です。なのでこれから書くことは完全に的を外しているかもしれません、とまず言い訳をしておくのですが…。

宇和島にいたころ、よくこんな話を耳にしたことがありました。
「宇和島では、ミカンは買うものではなく、貰うもの」
当時は別に不思議に感じることもなく、やはり産地というのはそういうものか、すごいなと思っておりました。

二宮さんの記事を読んで考えさせられました。
「味よりも外観」ここに引っかかりました。
そして直ぐに地域起こし協力隊の渡部さんの次のような記事とつながりました。

味は抜群なのに、見た目の悪さで商品にならない「みかん」。
それが「加工用みかん」。

通常農家さんは加工用みかんを売りに出してもキロ数円にもならないのが現状。
それが山に捨てられる(売るのが面倒、往復のガソリン代がもったいない、その暇があれば収穫するなど)

外観が悪く、値がつかないから山に捨てられる…
もしかしたら、(味はおいしいのに)売り物にならないミカンが、捨てるぐらいならと宇和島のまちの中でタダで出回っていたのではないかと…。
そして農家さんも、貰う人も、長い時間を経てそれが産地の習慣であるかのごとく、あたり前のこととして疑問もなく定着しているのではないかなと。もちろんわる気はないはずです。
「宇和島では、ミカンは買うものではなく、貰うもの」
そこには善意と感謝があるわけですね。それゆえ根の深いものがあるのではないのかなと。(最初に書きましたように、素人かつヨソモノである私の勘違いかもしれないのですが)

農家のほぼ全員から「農家は食うには困らんが儲からん」と聞き続けました。
今まで農業を営む方が子どもたちに
「こんな重労働で儲からん仕事するよりも勉強して都会に出たほうが良い」
と語っている人も多いのです。

以上は、渡部さんのFacebookからの抜き書きです。

渡部さんは、その加工用みかんを買い取り基準では仕入れず、その数倍の高値で買い取ります。そして500本のジュースができたそうです。

どういうことなのでしょうか?

渡部さんはこうもおっしゃっています。
「何故柑橘農家が減り続けたのか?を考え続けています。
少子高齢問題が病巣ではない気がするのです。」

考えてみると野菜なんかもそうですよね。曲がったキュウリは売れない。味は変わらないのに。

渡部さんは今、そこに挑戦しています。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
278)一生懸命育てた作物(みかん)を捨てるなんてあってはならないはず…

宇和島ではこんな話もよく聞きました。
あこや貝の貝柱のことです。美味しいですよね!けっこうなお値段です。
でも昔はもっと安かったと…。捨てていた時期もあったと…。
価値が認識されず安かったモノ、捨てられていたモノ。そのモノ本来の価値に気付いてもらえれば商品価値は出てくるということなのだと思いました。貝柱って見た目は関係ないですよね。美味しさが認識されていたかどうか、単純にそこだけだと思います。ミカンはなまじ見た目も良し悪しが認識できてしまうためそこがネックになってしまっているのかもしれません。口に入れるより先に、視覚で認識できてしまうため、まずそこでフィルターにかかってしまう。ミカンの本来の価値は味なのに。

何に価値を見出すかは人それぞれですし、それは善悪の問題ではないのですが…。
生産者の方々に苦労をさせている、私たち消費者も実は損をしているかもしれない、その原因の一つが悪意なき消費者にもあるかもしれないです(消費者が外観に価値の重きを置き、その結果、生産者が味を二の次にせざるを得ない状況をつくっているという意味において)。
消費者が、柑橘本来のよさに気付けていない、わかっていないということなのですね。

二宮さんはそこに切り込んでいこうとしているように思えます。

NPO法人 柑橘ソムリエ愛媛
代表者氏名 二宮 新治

定款に記載された目的
この法人は、一般消費者に対して、柑橘を通じた愛媛の観光・文化・人材交流など、国際的に発展できる農村環境づくりと、柑橘の生産を通して特徴や柑橘本来の味覚など表現方法のガイドラインを作成し、消費者に多種多様な柑橘の良さを広げることを目的とする。

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