218)視点・論点 「学校が地域を変える」

2015年02月19日のNHK「視点・論点」です。
冒頭の記述はこうです。

昨今“地方創生”について注目が集まっていますが、多くの議論は地方への移住定住や雇用の創出に関してばかりです。しかし、中長期的に考えれば、東京から地方へ人やお金を送るだけでなく、仕事をつくれるような人を地方が育てていくような仕組みも重要です。今回は、島根県立隠岐島前高校の魅力化プロジェクトの事例をもとに、地域における人づくりや教育、学校の果たす役割と可能性について考えてみたいと思います。

詳細はこちらをご覧ください。多くのヒントがあるように思います。
視点・論点 「学校が地域を変える」

ポイントを拾ってみます。

学校がなくなることは、地域にとっても計り知れない損失です。島に15歳から18歳の若者はいなくなります。

子どもが「行きたい」、親が「行かせたい」、地域住民が「この学校を活かしていきたい」と思うような魅力ある高校づくりを通して、魅力ある人づくり、そして持続可能な地域づくりを目指そうというのが目的です。

プロジェクトで最も力を入れたのが「地域の未来をつくる人材の育成」です。島前高校の卒業生の95%以上の生徒は進学や就職で本土に出ていき、将来島に帰ってくる割合は約3割です。島を出た卒業生に「地元に帰らない理由」を尋ねると、多くが「帰りたいけど、働く場所がない」「仕事がないから、帰れない」などと答えます。
プロジェクトでは、地域への誇りと愛着を育むことに加え、「仕事をつくりに島へ帰りたい」「自分のまちを元気にする新たなことを起こしていきたい」といった地域起業家精神の育成も重視しました。

そこで、島前高校では地域を舞台としたキャリア教育を展開することにしました。「島全体が学校」「地域の人も先生」というコンセプトのもと、生徒たちが実際のまちづくりや商品開発などを行うことで、創造力・主体性・コミュニケーション能力など社会で活躍するための総合的な人間力を磨くカリキュラムを設けました。

プロジェクトの成果は、思いのほか早く、出始めました。たとえば、「島の魅力なんて考えたことがなかった」という島内出身のある生徒は、島留学で来た生徒たちが「島前っていいよね」と言うのを聞くうちに、気づかなかった島の魅力を再発見できるようになり、将来は「島の観光業を元気にしたい」と話しています。

プロジェクトを開始してから入学希望者数はV字回復を果たしました。島前高校への入学者数は増え続け、平成24年度からはへき地の高校としては異例の学級増となりました。

これまで地域づくりの文脈において教育や学校というものはあまり注目されてきませんでした。しかし「ここで子どもを育てたい」という教育ブランドを築くことで、子育て世代の若者の流出を食い止め、逆に子連れ家族のUIターンを呼び込むこともできます。教育には、地域を変える大きな可能性が秘められています。

資源の乏しい島国においては、ヒト・ワザ・チエこそが最大の資源であり、箱物づくりから人づくりへ軸足を変えないことには、生き残れません。

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海士町は「成功事例」ではなく「挑戦事例」 人が集う「教育の島」「島全体が学校」

地域の教育力、地域の人材を活かすことを考えました。地域の課題解決やまちづくりへの挑戦を通して生徒の人間力を育む教育活動は、そうした背景の中で生まれてきました。海士町は、島全体が学校なのです。

カリスマによるリーダーシップではなく、多くの人間の協働による「チームシップ」が重要だと考えました。仲間を増やし、多様な関係者の協力を得ながら進めることを意識しました。

私たちは、この取り組みを「成功事例」とは思っていません。「挑戦事例」と呼んでいます。挑戦はまだ継続中で、ゴールではありません。それでも近年、多くの自治体や学校等が視察にやってきます。ただ、島前高校の取り組みを、形だけ真似て他の地域や学校でやってみてもダメだと思います。

そして、「地域と学校」、「生徒と社会課題」、「地元とよそ者」など、既存の教育現場ではつながっていなかったものを結び付けて、新しい「学びの場」を創造していく。「異なるものの縁結び」が改革のポイントだと思います。

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