192)続報「宇和島プロジェクト」 輸出販路拡大 県に協力要請

前回(191)の続報です。愛媛新聞の記事をご覧ください。

輸出販路拡大 県に協力要請

前回の報道は次のような内容でした。

イスラム教徒の戒律に沿っていると認められた「ハラル認証」を取得した。イスラム教徒の多い東南アジアや中東への輸出拡大につなげるほか、2020年東京五輪に向けて国内の販路拡大も図る。
今回の対象は、養殖クロマグロと県の新養殖魚種「スマ」、調理する加工施設の3点。基準が厳しく、他国でも通用するとされるマレーシア政府認証機関の公認で、宇和島プロジェクトによると、養殖魚の認証取得は国内初

今回はクロマグロとスマに絞ったが「取得の流れが把握できたので、養殖のブリやタイ、サーモンなど魚種を増やす」と意気込んでいる。

木和田社長は「認証取得を足掛かりに富裕層の多いドバイを中心に売り込み、海外販売を3分の1まで伸ばしたい」と話している。

ポイントは3つあると思います。
一つ、養殖魚では国内初。しかも他国でも通用するマレーシア政府認証機関の公認。
二つ、今回はクロマグロとスマ。今後ブリ、タイ、サーモンなど魚種を増やす
三つ、認証取得を足掛かりに、富裕層を中心に海外販売を伸ばす

これらのことは、今後の宇和海の養殖漁業に大きな改革を起こすチャレンジのキックオフのような気がします。後半でその理由について考えてみます。

そして、今回の報道の内容は、次のとおりです。

「ハラル認証」を取得した宇和島プロジェクトの木和田社長が、中村知事に認証を生かした販路拡大への協力を求めた。

中村知事は「イスラム圏への輸出の切り札になる。県営業本部と連携して取り組もう」と祝福。木和田社長は、輸出への足掛かりとして日本にある各国の大使館に売り込む考えを示し「中小企業では難しいので、力を貸してほしい」と要請した。

こちらもポイントは3つあると思います。
一つ、このスピード感
二つ、産官の連携(宇和島プロジェクトと県営業本部)
三つ、具体的な作戦(国内の各国大使館への売り込み)

宇和島プロジェクトのホームページ、そのトップページの最上段には次のようにあります。
「宇和海水産物の生産・加工・流通・販売の改革を起こす「宇和島プロジェクト」

そして、木和田社長の座右の銘は “動けば変わる” だそうです。
確かにスピード感を持って動かれています。そして変化が起きています。

宇和島プロジェクトによる「改革の物語(ストーリー)」。それは宇和海の養殖漁業が長く続いた苦境を脱し、再び発展を取り戻す自信と誇りに満ちた物語になっていくのではないでしょうか。その物語が序章を終えて、いよいよ本編に入っていく。そんな気がします。

ちょっと大げさだったかもしれませんが…、
なぜそう感じるのか。そこを次のような視点で私なりに考えてみます。
宇和島プロジェクトが目指していることの価値の大きさが見えてくるように思います。
(なお、私は水産業の素人です。無知や思い違いがあるかもしれません。ご容赦ください。)

その前に、まずこれをご覧ください。
愛媛が誇るスゴVen -愛媛発!ベンチャー企業「スゴVen.」データベース-
で取り上げられてる「宇和島プロジェクト」です。
次のような見出し構成になっています。いわば物語の章立てになっています。

漁業を根底から支えたい
みんなが得する仕組みを確立

注目食材〝みかん味のブリ・鯛〞
鮮度を保ち、全国へ発送

販売元の要望に合わせた加工
海外進出への足がかりに

スゴベン1
スゴベン2

さて、話をもとに戻します。次の順序で考えてみます。

1 国内市場の縮小の問題(生産者が苦しい状況に置かれている理由)
2 国内市場を開拓するチャレンジ
3 付加価値を高めて高く売るチャレンジ(進まない6次産業化へのチャレンジ)
4 海外市場の開拓の可能性とその意義
5 以上を踏まえ、宇和島プロジェクトのチャレンジの意味を改めて振り返る

それでは1番目から。

1 国内市場の問題(なぜ生産者が苦しい状況に置かれているのか)
前回(191)で紹介した「AFCフォーラム 2014年10月号」の特集記事の中で、近畿大学農学部水産学科の有路昌彦准教授は次のように指摘されていました。

 わが国の養殖水産物が直面する市場で、常に問題になるのが「過剰供給」である。近年国内市場の縮小を背景に、いわゆる「つくりすぎ」による価格の低下が指摘されている。
特に主力養殖魚種であるブリ、カンパチ、マダイの三魚種は求められる環境条件と技術が近いことから、一つの魚種の価格が暴落すれば別の魚種の生産に切り替え、その結果、生産が集中した魚種の価格が一年半後に暴落するという傾向がこの数年続いてきた。
ここで最も重視すべき点は、いかにしてこの過剰供給状態を解消するかということである。過剰供給とは、需要に対して超過供給が発生していることを意味し、需要が縮小すれば過去と同じ生産量であってもそれは超過供給を発生させてしまう。しかし生産量を減少させる生産調整は、わが国の生産性と競争力を低下させ、結果として不可逆的に養殖業を衰退産業にしてしまう。

我が国の市場は、大きな二つの要素により縮小している。
一つは国民の実所得の減少である。
もう一つが高齢化と人口の減少である。前者は一人当たりの需要を減らし、後者は掛け算で全体の需要量を減少させる。
これらの要因は、それほど簡単に改善するものではないことから、わが国の水産物需要の減少は数十年というかなり長期的なものであり、一〇年程度で改善するようなものではないということは改めて認識する必要があるだろう。

ここまできて、ちょっと今日は時間切れになってしまいました。
続きは次回以降に回します。すみません。

最後に、今年3月に策定された愛媛県の水産振興基本計画をご紹介します。
本日の記事で中村記事が約束していました。基本計画の内容とも合致します。
愛媛県はやると思います。

次回以降、はこの計画の内容も見ながら考えてみます。
(最近、次回以降って言って、取り上げたいテーマというか宿題がどんどん溜まってしまって、手が回らなくなってます。笑)

こちらのリンクからPDFをダウンロードできます。
第5次愛媛県水産振興基本計画

5次 水産振興基本計画 表紙

5次 水産振興基本計画 はじめに

フォローする