165)【重要】愛媛県南予地域官民連携事業承継推進構想

「宇和島・伊達藩校構想(※)」の方向性と完全にシンクロする動きですので取り上げます。
強いて違いを指摘するとすれば、「愛媛県南予地域官民連携事業承継推進構想」は差し迫った当面の対応に視点を置いている一方、「宇和島・伊達藩校構想」は中長期的視野での対応として地域を担う人材の育成に視点を置いているという違いはあります。
個人事業体も含めて経営者の方々は必見です。そうでない方々もご覧いただく意義があると感じます。なぜなら、まず小さなところでは家庭からできることもありますし、そうした取り組みを含めて様々な地域における取り組みとそれらの連携の集積が大きな流れと力を生み出す可能性があります。
是非ともご覧ください。ただし、今回は読むのに少し気合が必要です。

なぜ事業継承が進まないのか

愛媛県南予地域官民連携事業承継推進構想
- 地域に地元企業がなくならないために -
(平成 28 年5月 南予地域官民連携事業承継推進本部)

この文書は冒頭、次のような課題認識から始まります。

愛媛県南予地域官民連携事業承継推進構想(以下「構想」という。)は、愛媛県南予地域 における企業の事業承継が、この地域の共通の課題であり、共同で解決するべき課題であ ることにかんがみ、南予地域9市町らが、民間事業者らと連携して、事業承継の推進をす るための方向性について、定めるものである。 なお、この構想は、行動に移していくための事業計画によって、具体化されるため、具 体的な事業内容の検討により、構想内容が事業計画においては変更されることがあり得る。

そして、本文最初の記述は次のとおりです。

後継ぎがいない
1 課題認識
少子高齢化の波は、企業の経営者にも影響を及ぼしている。企業の多くを占める中小企業では、約4割に後継者がおらず、事業の存続が危ぶまれている状況にあるとされる。この 10 年で、景気動向の影響もあるものと思われるが、地域にある企業において、跡取りがおらず、気づけば、身近な企業が少なくなってしまったという実感が、南予地域の誰しもが大なり小なりあるだろう。
こういった状況をデリケートな問題だからといって放置すれば、事業の存続が危ぶまれ、景気の善し悪しに関係なく、企業が減少して、働く場が減少し、そして人口が流出してしまう可能性があり、悪循環となってしまう。創業・起業を進めればよいという意見もあるかもしれないが、南予地域の創業・起業気質は他の地域と比較して、それほど高いというわけではないことから、創業・起業の推進でその減少に直ちに歯止めをかけるというのには無理がある。
これまで、地方公共団体、商工会議所・商工会、金融機関等は、それぞれの課題意識に基づき、様々な対策を個別に取ってきたが、お互いが協力し合うといった気運にまで高まっていなかった。それぞれの組織は、それぞれに強み弱み得手不得手がある。相互にお互いの弱みや不得手の部分を補い、強みと得意分野をより一層強化していくことで、より効果的な対策がとれる可能性がある。
このため、企業の存続を図るため、それを拒む一要因としての後継ぎ問題について、地域が、そして官民が連携し、この難局を打破しなければならないとの認識の下、南予地域官民連携事業承継推進本部(以下「推進本部」という。)を設置した。

中ほどで、「事業承継推進ラウンドテーブルの設置」という記述が出てきます。
当面の課題としての「事業継承」に視点を置いた取り組みのスキームということになろうかと思いますが、中長期的な課題としての「地域を担う人材育成」に視点を置いた場合の取り組みのスキームも全く同じラウンドテーブルの体制が望まれると感じます。
人材育成の視点で、必須的に加えるべきは小中高の教育機関との連携です。
結論としては、当面の課題としての「事業継承」と中長期的な課題としての「人材育成」はパッケージとして同じラウンドテーブル体制の中で取り扱っていくことが可能ないしは望まれます。
その理由は、要するに「人材」による「事業継承」の問題だからです。

3 事業承継推進ラウンドテーブルの設置
これまで事業承継については、問題意識を有するそれぞれの関係者がそれぞれで対応し
てきたことから、課題を解決するには限界があった。
このため、事業承継を円滑に進めていくことを目的に、南予地域9市町はそれぞれ事業
承継推進ラウンドテーブル(以下「ラウンドテーブル」という。)を組成するものとする。

1.体制
ラウンドテーブルは、概ね次の者から構成するものとする。
① 地方公共団体
② 商工会議所・商工会
③ 金融機関
④ ①~③に掲げるほか、事業承継に協力するその他団体
⑤ 士業(弁護士、公認会計士、税理士、司法書士、中小企業診断士等)

2.事務
推進本部において定めた事業計画書に基づき、実施計画を策定し、計画に基づき事務
を行う。次の内容を想定している。
① 事業承継よろず相談所の設置
② 事業承継困難事業者等に対する訪問相談
③ 事業承継先希望者と事業承継元希望者のファーストマッチング
④ 事業承継先希望者と事業承継元希望者のアフターフォロー
⑤ 事業承継、経営相談の実施
⑥ 後継者育成支援プログラムの実施

以上の記述の情報元はこちらです。
第2回南予地域官民連携事業承継推進本部会

関連の資料(PDF)はこちらからダウンロードできます。

 愛媛県南予地域官民連携事業承継推進構想
 愛媛県南予地域官民連携事業承継推進事業計画(たたき台)

第2回南予地域官民連携事業承継推進本会の議事概要と会議の模様が公開されています。
平成28年5月10日(火)13:30~15:15
西予市役所5階 大会議室

宇和島市からは次のような発言がなされようです。

【宇和島市】
・小規模の事業所が多数あること等、厳しい状況を実態調査結果で感じた。調査結果によれば役所に事業承継の相談を希望する方が8件あった。
現在はどのようなランドテーブルを行うかは協議ができていないので、商工会等と状況確認と相談しつつ計画も参考に進めて参りたい。センシティブなところをどう解消するか検討を進める。

注目すべき意見としては、大洲市から次のような発言があったようです。
「住居・店舗一体型の事業者に後継者がいなくて、そのまま空き家になり、これが危険空き家になっていくおそれ」
おそらく宇和島でも同様の課題はあるように感じます・

【大洲市】
・具体的にラウンドテーブルに着手はできていない。一番力を入れているところでは、地域ブランドの創出を行っている。外向けには、いいもんセレクションを、内側では食を通じた交流人口、近隣への戦略的PRなどがある、これらと並行して事業承継を進めたいがマンパワー不足の状態。
・実態調査を見ても個人事業者が多く、これらが悪化している。この課題は、住居・店舗一体型の事業者に後継者がいなくて、そのまま空き家になり、これが危険空き家になっていくおそれがあると、問題とリンクしている。事業承継の枠だけでなく、その範囲を広げると都市計画にも関わってくると感じた。
・実態調査の回答者が、内容を咀嚼して回答されたか疑問を感じるところがあったので、早めに最初の聞き取り調査を行い、意向確認を行えればと思う。

公開されている「第2回南予地域官民連携事業承継推進本会の議事概要と会議の模様」は、次のとおりです。

当面の課題としての「事業継承」
中長期的な課題としての「人材育成」
これらはパッケージとして同じラウンドテーブル体制の中で取り扱っていくことが可能ないしは望まれる。なぜなら、両者は要するに「人材」による「事業継承」の問題だから。
ということを申し上げました。
以上のような考え方が的を射ているかどうかは別として、次回以降では、当面の課題・中長期の課題の双方に共通する問題(なぜ宇和島の人口は減るのか?)について、掘り下げて考えていきます。

フォローする