178)宇和島の人口減少の原因とは何か?これからどうなるのか?

150拡大 宇和島市の年齢別人口及びその推移

宇和島市は「消滅可能性都市(全国896市区町村)」の一つにあげられています。
2014年5月に「日本創生会議」が発表したいわゆる「増田(座長)レポート」です。

どういうことなのでしょうか?宇和島の人口減少の原因は何なのでしょうか?
今回はそこを見ていきます。非常に深刻な構造が見えてきます。

グラフは2015年の年齢別人口2005年~2015年の間の年齢別人口の推移を視覚化したものです。(以前にも取り上げていますが、今回、データを更新しましたのであらためて紹介します。データ元は宇和島市のホームページの人口統計。)

横軸は年齢、縦軸が人数です。黒い太線は2015年の各年齢ごとの人口を結んだものです。
一番多いのが66歳、1780人
一番少ないのが0歳、463人
ものすごい人数の差がありますね。少子高齢化の意味がよくわかります。

ヒゲみたいな細い線は何かと言うと、
例えば、1948年生まれの人たちは2015年に66歳1780人だったわけですけど、1年前は何人だったか、2年前は…、5年前は…、11年前の2005年は何人だったのか…、というぐあいに最近11年間の各年齢ごとの人口推移を示しています。

ここから見えてくる宇和島の現実、予測される将来とは、何か考えてみましょう。

まず一つ目の特徴。一番大きな特徴は何か。ヒゲの細線を見てください。どの年齢層でもだいたい横ばいです。宇和島に住み付くと概ね住み続けるということがわかります。ご高齢になるに従って亡くなる方が増えてヒゲの線が右肩下がりになる。これは仕方がないことです。

問題は高校を卒業した後の10年ぐらいの間に何が起きているかです。太線とヒゲ線が重なってしまって訳が分からないぐらいになってしまっています。

2015年に27歳の1988年生まれの人たちを例に見てみましょう。(少し目立つように赤線で示しています。)
高校卒業前の17歳の時、1008人いました。
2015年、27歳になって、504人まで減ってしまっています。
ちょうど半数の若者が宇和島を出て行ってしまっているのです。そしてほとんど戻ってこない状況にあります。

宇和島には大学がないので進学のために街をでるのは仕方ないかもしれません。
深刻なのは、右肩上がりのヒゲ線がほとんど現れないことです。宇和島を出て行ってしまった若者が、ほとんど戻ってこないことを意味します。そういう状況がず~っと続いてきてしまっているのです。

半分まで減ってしまった若い人が宇和島で子どもを産みますが、半分まで減った人から産まれる子どもですから、毎年毎年、子どもの数は減っていきます。そして小学校も中学校も、廃校、統合が進むことになってしまっています。

平成28年度の市内の小学校と中学校の児童・生徒の数は次のような状況になっています。
(データ元は宇和島市のホームページ)
全校の児童・生徒数もさるとこながら、各学年の人数にも注視してください。
小学校では、明倫・和霊・番城以外は各学年1クラスを維持するのがやっとという状況でしょう。
中学校では、城北・城東以外は各学年3クラスを維持するのは微妙です。
おそらくかつては1学年10クラス以上あったのではないでしょうか。
状況の変化は既にここまできているのです。(40代以上の方の中には驚きを隠せない方もいらっしゃるのではないでしょうか。)
今後、状況は更に進展するはずです。

小学校人数

中学校人数

さて…、
この問題が厄介なことは、状況の変化がゆっくり、ゆっくり進むことです。ほとんど痛みを伴うことなくジワジワと進展します。ゆで蛙みたいな感じです。気がついた時にはもう手遅れ。そんな危機感を覚えます。

この人口の縮小再生産のスパイラル構造を変えることができなかったら…、今の状況が続いてしまったら、それが宇和島の消滅可能性の意味だと感じます。

高校生は、なぜ宇和島を出て行って戻ってこないのでしょうか?理由は一つではないと思いますが、小さくない理由は明らかになっています。

高校生が、生まれ育った故郷・宇和島にどんなイメージを持っているのか?平成20年に宇和島市が行った「宇和島シゴト人バスツアー」という事業。これに参加した高校生のイベント参加前後の宇和島に対するイメージの変化
ここに答えの一つがあるように思うのです。これについては次回以降あらためて取り上げます。

二つ目の大きな特徴。
66歳を頂点とした大きな人口の塊(いわゆる団塊の世代)。66歳はまだ元気な方々が多数だと思います。10年後はどうでしょう?20年後はどうでしょう?
この大きな人口の塊が、いわゆる後期高齢者の領域に入っていきます。宇和島を支えてきてくださった大先輩たちの介護をどうするのか。ここも必ず大きな課題になっていくはずです。
そして今は現役のこの大きな人口の塊が、今後次々と現役を退くことになります。この方々が担ってきた事業の経営労働力の穴埋め(継承)はどうなるのか
いよいよこれから本格的に大きな変化の波が宇和島に押し寄せることになるのです。
このまま何もしなければ、現状を変えることをしなければ…、宇和島には長い時間を経て消滅可能性があるということだと思います。

人口減少というヒタヒタとジワジワと迫ってくる巨大な敵には、もはや行政だけの力では太刀打ちできないように感じます。税収も必ず減るはずだからです。

では、宇和島には持続可能性はないのでしょうか?あると思います!
行政だけの力では限界があるかもしれません。地域の人たちが一致団結できるかどうか。ここにかかっているのだと感じます。

大都会では隣の家の人と挨拶以上の会話がありません。
一方、宇和島はどうでしょう。南予・宇和島の方々の「お人柄」そういう人たちの強い「つながり」があります!それはこの地域の風土、文化と言ってもいいかもしれません。
この素晴らしさは目には見えませんが、ものすごい魅力、強み、資産だと思います。
これは、どれほどのお金を積んでも、一朝一夕につくり上げることはできないものです。
永い営みの積み重ねの歴史によって出来上がった伝統・文化だと思います。大都会が逆立ちしても真似ることはできない、宇和島の強みです。

2つ大事なことがあると思います。

一つ。楽観は禁物です。
現状は衰退が進行中です。なので現状を変える必要があります。ところが変化を好む人はあまりいません。普通は誰しも変化は歓迎しません。特に痛みの伴う変化ならなおさらです。したがって地域が一致団結して今後の方向性を重ね合わせていくためには、まず危機感を共有する必要があると思います。

二つ。希望はあるということです。
宇和島には他にはない強みがあるからです。宇和島の強みについて認識を共有できるか。そして、その強みを活かすことができるかどうか。ここだと思います。

次回以降、引き続き考えていきます。

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